2012/07/31

ヒマラヤの風にのって| Book No.224


吉村達也 最後のノンフィクション・エッセイ 

『ヒマラヤの風にのって』
「進行がん、寿命3週間の作家が伝えたかったこと」


「本書の著者であるぼくは、この本が出版された時点ですでに死んでいる。
プロローグに述べたような『象徴的な死』ではなく、実際に死んでいる。
多くの読者は、ぼくの死後、ゴーストライターがこの本をまとめたと思うだろう。
だが、『ぼくは――』ではじまる一人称の文章は、実際にぼく自身が生前に――
それも杏雲堂病因8階個室のベッドの上で書いた」     
吉村達也

肉体状況は極めて深刻で、見通しの暗いものでありながら、入院初日からぼくたち家族三人は精神的にまったく動揺がないし、涙もなければ悲嘆に暮れることもなく、信じられないかもしれないが、病室には笑い声が絶えない。処置室にさえ、笑い声が響くほどだ。
治る可能性の大小にかかわらず、「ガンは怖くない」という心境にすばやく到達したからだ。
この本は、手遅れを招いた救いようのない大バカ者でも、死と明るく向かいあうことができることを実証した記録である。
(本文より)

【目次】
プロローグ ぼくはすでに死んでいた
第一章 どうしてここまで放っておいたの
第二章 超手遅れのガン患者、やっと入院する
第三章 作家が口述筆記をしてまでも伝えたかったこと
第四章 作家が自ら取材ノートにつづった入院の記録
エピローグ 妻と娘からのメッセージ
あとがきにかえて 梶原秀夫

四六判223ページ
角川書店(2012.7.31)
定価:本体1500円(税別)