2011/11/10

ウイニングボール(上・下) | Book No.220-1 , 220-2

 
文庫判・280頁(上・下とも)
2011年11月15日発売(File No. 220-1, 220-2)

出版社 / カテゴリー:
ハルキ文庫/ 21 山岳ミステリー

帯キャッチ:
(上巻)
たった一球の行方が、恋愛小説家の運命を変えた!
愛と謎の山岳ミステリー

(下巻)
健太を死なせるな!
過去の確執を越えて、仲間たちは冬山へ向かう


あらすじ
(上巻)
長野県の少年野球大会決勝戦、旧戸隠村チームのエースで小学校5年生の沢口健太は、完全試合達成寸前だった。

だが、同級生のキャッチャー立花駿介のミスで大記録を逃し、健太は激しく仲間をなじった。

その態度に怒ったコーチの寺尾慎吾は、投手に渡されるべきウイニングボールを遠くの草むらへ投げ捨てる。さらに応援席で見ていた父の繁は、大勢の観衆の前で息子を平手打ちにした。

その出来事で、健太の心は激しく歪み、両親を憎んだ。



十数年後――

東京で働いていた元キャッチャーの立花駿介は、恋人の長瀬春花をともなって、ひさしぶりに故郷の戸隠へ戻ってきた。父親の電器店を継ぐためだった。

そして春花は、かつて健太や駿介の野球チームを指揮した「コーチ」寺尾慎吾がオーナーシェフとして経営する「ピザとパスタの店 スノーバード」で働きはじめた。

だが春花は、自分の気持ちが意外な方向へ進んでいくことに驚く。駿介と結婚の約束をしていながら、寺尾に惚れてしまったのだ。ただし、オーナーシェフとしての寺尾に対してではない。

近くの山でひとたび遭難発生の知らせがあると、食事中の客がいてもかまわず救助に飛び出していく、山岳救助隊リーダーとしての寺尾に対してだった。



一方、恋愛小説家として華々しいデビューを飾った元ピッチャーの沢口健太は、恋人の霧島沙織と険悪な状況に陥っていた。

ふたりの愛をそのまま小説に写し取ったデビュー作『純愛の樹』は、沙織にとって一生の宝物だった。しかし、プロとなった健太がその後書いていく小説のヒロインも、すべて自分がモデルだと信じ込み、小説の展開に納得しないと不満を洩らすようになった。

現実と小説の区別がつかない沙織に、健太は怒った。こんなことでは小説を書いていけないと、本気で怒った。そして、一方的に彼女をふった。自分を作家デビューさせてくれた恩を完全に忘れて……。



そんなある日、健太のもとに、岐阜県警高山警察署から連絡が入った。

沙織が、冬の北アルプスで、デビュー作の『純愛の樹』と、健太の自己中心的な性格を象徴するような、あのウイニングボールを持って凍死していたというのだ!

(下巻)
自分の少年時代とまったく接点のない沙織が、15年近くも昔に草むらに捨てられたウイニングボールを、なぜ持っていたのか?

その一方で、健太の母は自殺を図り、一命は取り留めたものの、すべての記憶を失い、父はその母をつれて、戸隠から新穂高温泉へ移った。

家族三人が仲良かったころ登った西穂独標――その穂高の山並みを眺められるからだった。その山並みに、健太の父は、妻の記憶復活を託した。



母の不幸と恋人の死――その責任を一身に背負った健太は、恋人が凍死した雪の穂高へ、謎の解明と死の誘惑にかられて出かける。

だが、おりからの猛吹雪で滑落。山岳救助隊員となった、駿介たちかつての野球仲間は、寺尾の指揮のもと、健太を救うため、悪天候の中、ヘリと地上から決死の救出に乗り出した。

そして彼らを待ち受けていたのは、自然の猛威と、想像を超えたウイニングボールの真相!

健太は、完全に打ちのめされた――



北アルプスのレスキューへリに搭乗し、本番さながらのシミュレーション飛行を敢行。

さらに戸隠遭対協のレスキューリーダーの監修を得て執筆。

秋の夜長にたっぷり楽しんでいただけるミステリー&サスペンスの一作です。


ミニ解説:
▽プロフェッショナルのレスキューヘリパイロットとレスキュー隊員の取材ご協力を得て、6年越しで書き上げました。

▽著者初の、本格的に山を舞台にした作品です。


クレジット:
装丁・今西真紀/編集担当・原知子